10月に読んだ本、観た映画。
9月はこちら。 ayacai115.hatenablog.com
『戦争広告代理店』
ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)
- 作者: 高木徹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/15
- メディア: 文庫
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「バズる」ためには
- わかりやすい
- 既知の概念に当てはめられる(トラウマ、成功体験)
ことが必須なのだと気づきます。
欧米ならばナチス、日本ならば太平洋戦争、高度経済成長、バブル、3.11など、どの社会にも強烈なトラウマや成功体験というものはあります。人間は新しい枠組みを理解するのにエネルギーを要するので、既知の概念をそのまま使い回せるものを受容しやすい。もしくはシンプルな「善 VS 悪」。日々Twitterでバズっているツイートもまさにこれですね。
教育や日常生活を通じてこうした概念はインストールされ、考え方のパッケージとなります。そして人は基本的にパッケージにあてはめて世界を解釈します。なぜならば、楽だから。「楽なものを選択する」のは生物として自然なことです。
各国の報道やその解釈のされ方を考える時は、現地のこうした「パッケージ」の理解が不可欠だと感じました。
2の「既知の概念」も結局「善 VS 悪」が形を変えてインプットされただけのものなので、複雑なものを複雑なまま受け止める練習を教育でもっとすべきなのだろうな、と思いました。
『かがみの孤城』
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2017/05/11
- メディア: 単行本
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表紙が印象的で、ずっと前から認知はしていました。ふと手持ち無沙汰になったときに読んでみた本。
内容、文体ともに小中学生向けという印象。Amazonレビューに「稚拙」とあり、わからなくもない。いい話だなとは思ったので、期待値設定を間違えないのが吉ですね。
『むらさきのスカートの女』
- 作者: 今村夏子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2019/06/07
- メディア: 単行本
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打って変わって高尚な一冊。「芥川賞受賞」ということで本屋さんで衝動買い。
去年受賞した『送り火』同様、捉え方が明示されていない小説という印象でした。これが純文学というやつか。
この2冊を前にすると、私の人生最高クラスの小説体験である『蜜蜂と遠雷』と『ある男』は、もしかしたら「俗っぽい」のかもしれないという気がしてきます。悲しみ、同情、もどかしさ、喜び、安堵感。どこでどんな感情を抱けばよいのかわかりやすい。受け取り方に戸惑うことはない。
それに対して、芥川賞受賞の2冊は、よりメタな視点が求められます。ただ字面を追いかけているだけでは、「え、だからなんなの?」という読後感。『送り火』を読んだときはびっくりしました。今回『むらさきのスカートの女』が全く同じ読後感だったので、「あ、こういうもんなのね」と納得。
『ヘテロゲニアリンギスティコ』
ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~ (1) (角川コミックス・エース)
- 作者: 瀬野反人
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/12/04
- メディア: コミック
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漫画です。「言語・文化好きマンは絶対に好き」とTwitterで見かけて即購入。期待以上。
言語学者が異種族の言語・文化研究のためにフィールドワークをする話です。音声言語だけでなく、絵や動きなど様々なコミュニケーション手段が出てきます。外国語学習をがんばりたくなる。世界は面白い。
『ソフトウェア・ファースト』
ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略
- 作者: 及川卓也
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/10/10
- メディア: 単行本
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IT(とそれを構成するソフトウェア)活用を核として事業やプロダクト開発を進めていこうという本。プログラマにとっては既知の話が多いですが、それ以外の人のeye-openerとして存在価値がありそうです。実際、書店ではビジネス書のコーナーに置かれていて、普段ソフトウェア開発に無縁な層の入門書として最適かも。
『他者と働く』
他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)
- 作者: 宇田川元一
- 出版社/メーカー: NewsPicksパブリッシング
- 発売日: 2019/10/04
- メディア: 単行本
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組織論、そして人生観の話。
もともとの自分の考え方である「みんなそれぞれ、色々あるよね」の上位互換が展開されていた。世界を解釈する術が増えた感覚。
— スコーン (@ayacai115) October 27, 2019
とつぶやいたら著者からリプライが来てびっくりしました笑 つながる時代ですね。
著者は非常に苦労された方で、巻末にはその苦しみと向き合い、周囲を受け入れていく過程が描かれています。
憎んでいた彼らと私は、地続きの存在であることを認めないことは、とても卑怯なことではないかと思った。
だから、私はそこに連帯を見出すべきであると思った。連帯とは、私がもしも相手であったならば、同じように思ったり、言ったりしたかもしれないことを認めることである。私の中に相手を見出すことである。私と彼らは地続きの存在なのだ。
だから、一方的にではあるが、彼らと和解することにした。和解とは、これでそのことを一切恨まない、これでおしまいというわけではない。彼らを赦し受け入れる道を歩む決意をしたのである。
両親が離婚して数年間、母は私の敵でした。たくさん傷つき、絶望し、一時期は縁を切りたいとまで思いました。しかし私は「一方的に和解」できました。父から過去の話を聞いたり、改めて昔の母を振り返るうちに、彼女もたくさん傷つけられてきたということに気づいたからです。彼女の心に寄り添ってくれる存在は現れなかった。
そう悟ったとき、私は母と「一方的に和解」しました。「お母さんも、いろいろあったんだね」。そう思えるようになりました。
著者はもっと厳しく辛い経験をされていますが、葛藤や和解の過程はまさに私がたどったものでした。本書を通して、私のベースとなる考え方が改めて整理されました。これぞ読書の醍醐味、と言いたくなる一冊でした。
JOKER
JOKER観てきた
— スコーン (@ayacai115) October 14, 2019
寂しい、愛されたい、受け容れられたい、認められたい、私を見てほしい、笑って、笑わないで
……………心がいっぱいいっぱいになってしまった…………
鑑賞後しばらく経ってからどうしようもなく悲しくなって、数年ぶりに声がつまるくらい泣きました。これまでの人生でうまくいかなかったときの感情がうわーっと蘇ってきて、「悲しい、悲しい、悲しい」が止まりませんでした。
………なのですが、実はあれは全部「フェイク」で観客はJOKERの掌で踊らされていただけ、という説を見かけて唖然。うーんなるほど、そう解釈もできる。そういった面白さも含めて、非常に興味深い映画でした。もう一度観たい。
まとめ:2019年10月の日々
1年半がんばったダンスをやめ、心機一転仕事に打ち込んだ1ヶ月でした。書き物を読み返すとたった1ヶ月前ですら考えていることが全く違っていて、やはり書き残していきたいなという気持ちが強まりました。