「G型大学、L型大学」という言葉を聞いたことのある人は多いと思う。日本国内の大学をグローバル型とローカル型に分けて、それぞれで全く異なる教育を行おう、という考え方だ。数年前に冨山和彦氏によって提唱されて以来、教育業界のみならず各方面で議論を引き起こしている。
G型大学、L型大学という区分とその教育内容に関しては、反対意見多数の印象が強かった。ただ、この本については「なるほど、確かに!」と言える人が多いのではないだろうか。
昨今なににつけても「グローバル化」の大合唱であるが、それは違うんでないの、というのが本書の言うところだ。副題は「GとLの経済成長戦略」。経済は、GとLに分けられるという話。
Gの典型は、情報産業、IT系。小売り業やサービス業ほど人数を必要とせず、場所にもとらわれない。Gの産業が成長しても、小売り業ほどは地元に雇用を生み出さない。しかし世界中にサービスを展開することができる。
Lの典型は、小売業、バス会社など。人員を必要とするので各地域に雇用を生み出す。地域の特色に合わせ、地域に根付いた産業を展開する。地域ごとに事情が異なるため(最適化にコストがかかるため)、大手企業が幅広く展開することは難しい。
リーマンショックなどの大不況の影響を、G型経済はモロに被る。一方でL型はG型ほど被害は大きくない。大不況であっても、人は日々スーパーで買い物をするし、バスも利用しなければならないからだ。
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規模の経済性やネットワークの経済性が効くグローバル経済圏の産業は、おおむね上位数社に寡占、収れんされる。世界の上位10社程度まで広げれば、マーケットシェアの8割以上を占めてしまう。
たとえばスマートフォン(スマホ)業界は、首位の韓国サムスン電子とアップルの2社で半分近い 46.6パーセントを占める。上位5社までに広げると、60パーセントを超える。半導体、DRAM、リチウムイオン電池、液晶なども同じような結果になる。自動車業界にしても、上位10社を合わせたら7割から8割にもなる。
一方、小売業は違う結果になる。小売業はウォルマート、カルフール、イオングループ、セブン&アイなどのイメージからグローバル経済圏の巨大企業だと考える人が多い。しかし、小売業は世界の上位10社を合計しても、全世界の小売業売上高の10パーセントにもならない。日本国内を見ても、セブン&アイとイオングループを足しても10パーセントに届かない。
本書に「G型、L型大学」の言及は無かったが(たしか)、こうした経済圏に合わせた大学を作りたいということなのだと思う。それならかなり納得できる。
今の大学は広く浅く機会を与えようとしすぎていて、結局目的がぶれて何もできていない印象を受ける。あまりに等しく教育を与えようとしすぎていて、結局のっぺりひろがってしまっている。
だったらある程度大学としての目的を絞り、その目的を共有できる学生に入ってきてもらう、というのは非常に妥当な話ではないだろうか。本書でも言及があったが、GとLはどちらが上、下というものではない。
地域の特色に合わせて堅実に展開するビジネスと、世界を相手にスピード感をもって展開するビジネス。その違いだけである。
スコーンにはわからない難しい言葉もたくさん出てきたが、基本の構造がシンプルだったので納得しながら楽しく読めた。この人の本は確か3冊目だが、理路整然と新しい価値観を展開してくれるので面白い。またG型大学、L型大学関係の本も読んでみようと思う。